研究課題
昨年度までに、無症候HTLV-IキャリアのHTLV-I特異的T細胞応答の強さには多様性があることがわかっている。発症予防ワクチンの対象としてHTLV-Iキャリア中のATL高危険群を絞り込むことは重要である。しかし、HTLV-I特異的T細胞応答の低下が成人T細胞白血病(ATL)の危険因子であるかどうかについては検証が難しい。本年度、我々は、4型のATLのうちくすぶり型ATLに着目した。くすぶり型ATLでは感染細胞数は増加しているが、末梢血リンパ球数が正常範囲である点で慢性型ATLと異なる。一方、くすぶり型ATLと無症候HTLV-Iキャリアとの境界領域の集団が存在する。従って、境界領域〜くすぶり型ATLは早期のATLまたは発症リスクの高い集団と位置づけられる。このようなステージの患者数名の末梢血単核球(PBMC)を解析した結果、自発的にIFN-γを産生する検体と産生しない検体があったが、Tax蛋白特異的な反応性は乏しかった。感染細胞をPBMCから除去する目的でCCR4陽性細胞を除くと非特異的IFN-γ産生は減少したが、Tax特異的な応答性は回復しなかった。これは、HTLV-I随伴脊髄症/熱帯性痙性対麻痺(HAM/TSP)患者由来のPBMCからCCR4陽性細胞を除いた際に、非特異的IFN-γ産生は著明に減少し明瞭なTax特異的応答が認められることと対称的であった。また、くすぶり型ATL由来のPBMCは自発的に多量のHTLV-I p19を産生し、CD8陽性細胞を除いてもp19産生量はほとんど変化しなかった。一方、HAM/TSP由来のPBMCではp19産生は低いが、CD8陽性細胞を除くとp19産生量は著しく増加した。以上から、くすぶり型ATL患者とHAM/TSP患者のどちらもHTLV-Iプロウイルス量は高いが、HTLV-I特異的T細胞応答はHAM/TSP患者でのみ明瞭であり、これは感染細胞に対する制御能と一致していることが分った。これらの所見は、同様のレベルのプロウイルス量を持つ集団を、HTLV-I特異的T細胞による制御能によりさらに分類することが可能であり、両者の組み合わせは高危険群を絞り込む指標として有用と考えられた。
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