成人T細胞白血病(ATL)細胞やHodgkin Reed-Sternberg(H-RS)細胞における恒常的NF-kappaB活性化の原因解明にNF-kappaB inducing kinase(NIK)を軸に取り組み、NIK活性化のメカニズムを、蛋白、RNA、ゲノムレベルで解析した。具体的にはNIKに関しての、ウェスタン、免疫沈降、定量PCRによる分子生物学的動態解析とFISH法によるゲノムレベルでの異常検出を試みた。その結果、ATLおよびH-RS細胞株ではNIKタンパク質が過剰発現し、NIKのmRNAも高発現していること、とりわけATL患者の末梢血中の腫瘍細胞でもNIKのmRNAの高発現が21例中15例に認められることが明らかとなった。さらに、ラット線維芽細胞株でNIKを発現させNIKの細胞形質転換能を調べたところ、リン酸化酵素活性およびNF-kappaB活性依存性に細胞の足場非依存性増殖を誘導することがわかった。ATL細胞に見られる恒常的NF-kappaB活性化におけるNIKの重要性を調べるために、ATL細胞株にNIK特異的shRNAを発現させることでNIKタンパク質発現を低下させたところ、NF-kappaB依存的レポーター遺伝子発現が低下し、さらにNF-kappaBにより制御されATL細胞で高発現していることが報告されている内因性遺伝子の発現も低下することが判明した。このような細胞を免疫不全マウスに移植すると、もとのATL細胞に比べて有意に腫瘍形成が抑制されていた。以上の結果は、NIKがATL細胞において恒常的NF-kappaB活性化に重要な役割を果たしていること、NIKがATL、H-RS細胞に対する有効な治療標的になりうることを強く示唆する。
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