高脂血症治療薬として広く使用されているスタチンが、成人T細胞白血病(ATL)細胞に細胞死を誘導することを明らかにした。スタチンはコレステロールの生合成経路であるメバロン酸経路上のHMG-COA還元酵素を阻害することによってfarnesyl pyrophosphate(FPP)とその下流生成物であるコレステロール、Gerahylgeranyl pyrophosphate(GGPP)を減少させる。ATL細胞に細胞死を誘導するのが、転写因子NF-kappaB活性が低下するからではないことをルシフェラーゼアッセイで示し、細胞死誘導がGGPP量低下のためであることをスタチン存在下でGGPPを補えば細胞が生存することで明らかにした。コレステロール前駆体であるスクワレン添加では、細胞死誘導を阻止することはできなかった。さらにFPP、GGPPを標的蛋白質に付加するファルネシル化、ゲラニル化反応を触媒するFPP転移酵素、GGPP転移酵素の阻害剤(それぞれFTI-277、GGTI-298)を用いた実験により、GGPP付加蛋白質がATL細胞の生存に重要であることがわかった。実際、スタチン存在下では代表的GGPP付加標的であるsmall GTPase、Rab5bおよびRacのゲラニル化が抑制されていた。このことは、ATL腫瘍細胞におけるGGPP付加蛋白質の重要性を示すだけでなく、スタチンのATL治療への応用の可能性を示唆するものである。
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