申請者は、独自に開発してきたBACクローンを搭載したゲノムアレイを用いて肺癌細胞株のゲノムコピー数解析を行ってきた。 このBACアレイ上に、既に確立されているクロマチン免疫沈降法を展開することにより、ヒトゲノムDNAの98%を占める非コード領域に存在する機能的DNAエレメントの俯瞰的検システム(ChIP on BAC array法)の確立を行った。 この方法は、まず、転写因子などDNA結合蛋白質に対する抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行う。得られたDNA断片をアダプターPCR法にて増幅し、免疫沈降したサンプルをCy3で、またコントロールとして免疫沈降する前のゲノム断片をCy5にて蛍光標識し、ゲノムアレイにハイブリダイズするものである。 今回、800種類の癌関連遺伝子を含むBACを搭載したゲノムアレイを用いて、ヒトグリオーマ細胞株T98Gに対し、転写因子E2F1を解析したところ、E2F1の既知の標的遺伝子であるCCNA2、NMYCを含むスポットが3回の繰り返し実験を経ても陽性になることを確認した(Yokoi S.Molecular Medicine 2005)。また、この他にも複数の陽性スポットが検出され、この中に含まれる遺伝子に対し、RT-PCR法、ChIP-PCR、ルシフェラーゼ・アッセイ、ゲルシフト・アッセイによる評価を行い、E2F1の新規標的遺伝子を同定し得た。現在これらの遺伝子につき解析を進めている。 以上より、研究目的は達成されたと考える。
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