研究課題
Apc^<+/Min>マウスにBcl11b-KOアリルを導入すると、小腸アデノーマ形成が促進されることから、Bcl11bがWnt/β-cateninシグナル経路に関連することが示唆された。これはヒトの大腸がん抑制遺伝子であることを示唆する。そこで、ヒト大腸がんでBcl11bの変異検索を行った。対象とした50のヒト大腸がんで、5例に変異を8例にLOHを確認した。今年度はこれら変異の意義付けを行った。Bcl11b変異体の発現ベクタープラスミドをTOP/FOPflashレポータープラスミドと共にβ-cateninの発現様式が異なるヒト大腸がん由来細胞株(SW480、HCT116、CaCo2、RKO細胞)にコトランスフェクションし、48時間後に細胞を回収してデュアル・ルシフェラーゼアッセイ法によりレポーター活性の測定を行った。その結果、Bcl11bによりTOPflashベクターの転写活性が低下し、Bcl11bがβ-catenin活性を抑制することが分かった。また、欠損領域を持つBcl11bベクターを用いた解析で、Bcl11bのC末端側に存在する3箇所の亜鉛フィンガードメインを含む領域を欠く事により活性の抑制効果が見られなくなった。これらは、β-catenin(-)のRKO細胞を除く3つの細胞系で同様の結果が得られた。この結果から、Bcl11bはβ-cateninの転写活性を抑制し、C末端側3箇所の亜鉛フィンガードメインを含む領域が深く関与することが示唆された。次に、細胞内局在への影響をみた。5つの変異の内、1変異が核内移行の異常、残り2つは核内のタンパク質分布に異常を示した。以上の結果から、Bcl11b転写因子はβ-カテニン発現を抑制し、Bcl11b機能低下はβ-カテニンを上昇させ、それがリンパ腫、腸管腫瘍の発がん原因であると考えられた。
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