研究課題
電離放射線により誘導されるゲノム不安定化および発癌抑制にはヒト遺伝病ナイミーヘン症候群蛋白NBS1と毛細血管拡張性運動失調症蛋白ATMが中心的役割を果たしている事が知られている。しかし、NBS1複合体は大腸菌の組み換え修復蛋白SbcDに由来するのに対して、ATMおよびその類似蛋白ATRは酵母のチェックポイント蛋白に由来して両者の起源が異なる。そこで、相同組み換えのレポーター遺伝子DR-GFPを用いて両患者細胞の相同組み換え能を測定した結果、NBS1の欠損は相同組み換え能を1/4に低下するのに対して、ATM欠損では相同組み換え能に変化が見られなかった。これに対して、放射線による二重鎖切断修復の中心的な機構である非相同末端再結合はATMの欠損により大きく低下した。この修復機構の違いは、ATMの特異的阻害剤であるKU55933が非相同末端再結合を阻害するが相同組み換えに対しては何の影響も与えない事からも確認された。しかし、DNA複製の一時的停止を指標としたS期チェックポイントには両蛋白が必要である事が示された。このように、NBS1が修復蛋白である事が明らかとなったので、シスプラチンに代表される制がん剤で発生したDNA鎖架橋ICLの修復に対する役割を検討した。ICL修復はビオチン標識したソラーレンをゲノムDNAに導入してその除去速度を定量測定した。この結果、NBS1欠損によりICL修復が大きく低下する事が示された。同様に、ヒト遺伝病ファンコニー貧血でもICL修復が低下しており、両遺伝病の臨床症状には共通点が有る事からファンコニー貧血の蛋白FANCとNBS1は細胞内で共通の修復機構で機能していると思われる。このように、NBS1は放射線発癌の中心的蛋白である一方で、制がん剤による腫瘍の細胞死にも関わる蛋白である事が示された。
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