研究概要 |
ヒト細胞中には損傷バイパス合成(Translesion DNA synthesis, TLS)に関わる酵素はY-ファミリーに属するPol eta、iota, kappaそしてREV1、更にB-ファミリーに属するPol zetaなど複数が存在する。Y-ファミリーの酵素のそれぞれは異なる種類の損傷のバイパスに関わると考えられており、損傷箇所に適当な酵素がどうやってリクルートされるかを明らかにすることが重要な課題である。我々及び他のグループのこれまでの研究から,REV1のC末端の約100アミノ酸からなる領域にPol eta、iota, kappaそしてPol zetaのREV7サブユニットが結合することが分かっている。Pol eta、iota, kappaのxFFyyyy(xはあらゆるアミノ酸、Fはフェニルアラニン、yはプロリン以外のアミノ酸)という短いモチーフ配列がREV1のC末端領域との結合に関わることが明らかになった。一方、REV7にはこのような配列は存在せず、また100アミノ酸以上からなる領域が必要であることから、REV1のC末端領域とREV7は相互の立体構造を認識して結合すると考えられる。REV7はPol zetaの触媒サブユニットであるREV3やREV1のC末端領域の他に、ADAM9 (A Disintegrin And Metalloproteinase)やELK-1 (an Ets-like transcription factor)など、機能の異なるタンパク質とも相互作用することが報告されている。REV3、ADAM9、ELK-1の9アミノ酸からなる短いモチーフ配列(そのコンセンサス配列はffxPxxxPP、fは疎水性のアミノ酸、Pはプロリン)がREV7との結合に必須であり、場合によってはそのようなモチーフ配列のC端側に存在する数個のアミノ酸配列によってREV7との結合が安定化されることが明らかになった。REV7はspindle assembly checkpoint (SAC)に関わるMAD2と弱い相同性(23% Identity)を持つことからMAD2L2とも呼ばれ、REV7がSACに関わることが示唆されている。REV7とMAD2の結合モチーフ配列について比較検討し、それぞれのモチーフ配列の相違を明らかにしつつある。
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