研究概要 |
ヒトやマウスの細胞には損傷バイパス合成に関わるDNAポリメラーゼとして、Yファミリーに属するPolη、Polι、Polκ、REV1の四種類とBファミリーに属するPolζなどが存在する。Polη、Polι、及びPolκはそれぞれ違った種類のDNA損傷のバイパス合成に関わり、Polζはそれらの酵素がDNA損傷の向かい側に塩基を挿入した後の伸長反応に関与し、またREV1のC末端領域にはPolη、Polι、Polκ、及びPolζの非触媒サブユニットREV7が結合することからREV1は細胞内での損傷バイパスのプロセスにおいて中心的な役割を果たすと考えられている。REV7はスピンドルチェックポイントに関わるMAD2とアミノ酸配列において有意な相同性を示すことからMAD2L2とも呼ばれ、REV7はPolζの触媒サブユニットであるREV3と強く結合する一方で、その他の様々なタンパク質と結合する。そのようなタンパク質には短いREV7結合配列が存在し、そのようなモチーフ配列の内部や前後の配列によってREV7との相互作用の強さは大きく変動することが明らかになった。MAD2の結合する配列もまたREV7結合配列と類似しているが、MAD2のターゲットタンパク質であるMAD1, CDC20にはREV7は結合しなかった。CDH1はCDC20と類似したタンパク質であり、MAD2L2(=REV7)のターゲットタンパク質であると想定されてきたが、我々の結果ではREV7はCDH1には結合せず、REV7がスピンドルチェックポイントに関わる可能性は低いと結論した。このように、REV1のC末端領域とREV7はお互いの高次構造を認識して結合する一方で、短いモチーフ配列を認識して結合することが明らかになった。
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