研究概要 |
本研究ではNotchによる白血病の発症機構について解析を行った。マウスの造血幹/前駆(Lin^-Sca-1^+)細胞に4-hydroxytamoxifen(4-HT)によってNotch1活性が誘導されるNotch1/ERTを導入した。Notch1/ERT導入細胞は、4-HT非存在下ではサイトカイン存在下でも14日以上増殖できなかったのに対し、4-HT存在下では14日以上増殖を続けた。培養7日目では、4-HT存在下で培養したNotch1/ERT導入細胞は、4-HT非存在下の細胞と比較してc-myc,cyclin D2,D3,E,E2F1の発現が上昇していた。また、Notchシグナルが、c-mycプロモーターの-195bpから-161bpの部位にDNA結合蛋白を誘導し、同部位を活性化することが明らかとなった。 次に、造血細胞に内因性に発現するNotchが赤/巨核球系細胞の分化に及ぼす影響について解析を行った。まず、OP9システムを用いて赤芽球分化過程でのNotch1の発現を検討したところ、Notch1の発現はc-Kit^+の幼弱細胞で認められたが、分化とともに低下し、正染性赤芽球では消失した。マウスのLin^-Sca-1^+細胞をNotchリガンドであるJagged1を発現した3T3細胞と共培養した場合、EPOやTPOによる赤芽球、巨核球系への分化が強く抑制され、Lin^-の未分化な細胞が増加した。この分化抑制機構として、Notchによって発現が誘導されるHES1がGATA-1と直接結合し、GATA-1とp300との結合を阻害し、その活性を抑制することが明らかとなった。 以上より、Notchシグナルは細胞増殖を誘導するc-mycの発現を誘導すると共に、細胞分化に関わる転写因子の機能を抑制し白血病発症に関わると考えられた。
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