INK4A/ARF遺伝子座には2つの重要な癌抑制遺伝子であるp16^<INK4a>遺伝子とp14^<ARF>遺伝子が一部重複してコードされており、その発現は染色体構造の変化によっても調節されていることが示唆されている。しかしその発現制御メカニズムは殆ど明らかにされていない。また、これまでp16^<INK4a>遺伝子とp14^<ARF>遺伝子の発現解析には主に培養細胞を用いた研究が用いられており、このためp16^<INK4a>遺伝子とp14^<ARF>遺伝子が生体内のどの組織でいつ発現しているかについては不明な点が多い。本研究ではp16^<INK4a>遺伝子とp14^<ARF>遺伝子発現の染色体レベルでの制御機構を解明し、更にそれら遺伝子の生体内での役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、Bacterial Artificial Chromosome(BAC)ベクターに組み込まれた完全長のINK4A/ARF遺伝子座を含む染色体断片を改変することにより、p16^<INK4a>遺伝子の発現をルシフェラーゼ活性で測定できるベクターを構築し、そのベクターをもつトランスジェニックマウスを作成することに成功した。更に作成したトランスジェニックマウス(P16^<INK4a>遺伝子発現可視化マウス)を用いて、マウスの内在性p16^<INK4a>遺伝子の発現をリアルタイムに可視化・計測することに成功した。今後は、このマウスを用いて生体内におけるINK4A/ARF遺伝子の発現を正確に解析し、癌抑制機構の解明とその応用を視野に入れながら研究を発展させる予定である。
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