INK4A/ARF遺伝子座には2つの重要な癌抑制遺伝子であるp16^<INK4a>遺伝子とARF遺伝子が一部重複してコードされており、それら遺伝子の発現はヒストン修飾など染色体構造の変化によって精密に制御されていることが培養細胞を用いた研究から明らかにされてきている。しかし、一方でそれら遺伝子の発現は細胞培養によるストレスに大きく影響されることやヒトとマウスで発現制御が異なる可能性も指摘されており、これら遺伝子の発現調節機構を正確に理解するには培養細胞を用いた解析だけではなく生体内でヒトINK4/ARF遺伝子座の発現調節様式を解析出来るシステムを構築することが必要である。このため、本研究では完全長のヒトINK4A/ARF遺伝子座を含む染色体断片を改変することでp16^<INK4a>遺伝子又はARF遺伝子の発現をルシフェラーゼ活性としてモニター可能な染色体断片を構築し、それら染色体断片を有するトランスジェニックマウスを作成してきた。本年度はこれらのトランスジェニックマウスにおける生体内発光を様々な条件で測定することにより発光強度がマウスの内在性p16^<INK4a>遺伝子やARF遺伝子の発現を良く反映しているかどうかを解析した。その結果、p16^<INK4a>遺伝子の発現に関してはヒトとマウスでかなり類似しており、作製したトランスジェニックマウスを用いることによりマウスの内在性p16^<INK4a>遺伝子の発現を正確にモニター出来る可能性が示された。しかし、ARF遺伝子の発現に関してはヒトとマウスで有る程度異なるため、更なる工夫が必要であることが示唆された。現在、p16^<INK4a>遺伝子の発現を可視化出来るマウスを加齢の過程や様々なストレス環境下で継時的に発光強度を解析することにより生体内におけるp16^<INK4a>遺伝子発現のダイナミクスを解析している。
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