21番染色体胃がん連鎖領域より相関解析によって同定した胃がん感受性遺伝子「STCH遺伝子」の機能解析を継続した。胃がん細胞よりSTCH遺伝子体細胞変異223V-226L欠失変異を同定した。STCHは5つの保存性の高いATP結合モチーフ(Phbsphate1、 Connect1、Phosphate2、Adenosine、Connect2)からなるATP結合'ドメインを有しているが、225V-226LはPhosphate2領域にあり、in vitroでの解析により、223V-226L欠失変異STCHのATP結合能が著しく低下することを明らかにした。さらに、野生型STCHを安定強制発現させた細胞株はTRAILによる細胞死感受性を獲得すること、変異型STCH発現細胞株では細胞死感受性獲得能が低下することなどを明らかにした。また、STCHには小胞体局在シグナルが存在するが、これを欠いた変異STCHは細胞質内に移行し、細胞死感受性獲得能を失った。これらの結果により、STCHがTRAILによる細胞死シグナル経路に関与する小胞体局在分子であることが示唆された。さらにSTCHノックアウトマウスを樹立し、ホモ接合マウスが胎生致死となることを明らかにした。 また、メチル化をはじめヒストンのさまざまな共有結合修飾は、高度に組織化されたクロマチンの機能変化に関与し、その異常と発がんとの関連が示唆されている。これまで多くのヒストンメチル化酵素が同定され、その機能の観点から転写活性あるいは転写抑制に区別されている。最近、いくつかの非ヒストンタンパクの分子機能はヒストンメチル化酵素によるリジン残基の修飾により制御をうけることが明らかになった。p300/CBP-associated factor(PCAF)は多くの細胞機能にかかわるアセチル化酵素であるが、我々は、PCAFがメチル化酵素Set9の基質であることを世界に先駆けて証明した。
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