研究課題
われわれはT細胞・乳腺・骨髄・肝臓・脳・線維芽細胞・皮膚特異的なFbw7コンディショナルノックアウトマウスを作製して、その異常を検索中である。T細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスでは、本来細胞周期が停止すべきDP期にc-Mycが過剰に蓄積するために細胞周期が停止せず、最終的にp53を介して強制的に細胞周期が停止されている。そのためp53遺伝子の変異に伴い、効率にリンパ腫が発症することが明らかとなった。乳腺特異的Fbw7コンディショナルノックアウトマウスは、乳腺の発達障害から乳汁分泌不全を起こして新生仔の哺育ができず、ノックアウトマウスの仔はほとんど死亡する。乳腺上皮は高度のアポトーシスを起こしており、これはc-Mycの異常蓄積とp53の誘導が起こっていることが示された。つまり成熟T細胞と全く同じ表現型である。さらにT細胞と同様に長期間の後に乳癌を発症することがわかった。つまり乳腺上皮においては、c-Mycの異常発現がp53を誘導し、その結果細胞周期停止とアポトーシスの上昇を招くことが明らかとなった。このことから、Fbw7の欠失はc-Mycの過剰発現を招き、p53によるチェックポイントが作用して細胞周期は強制的に停止させられることが示唆される。しかしこのような不安定な状態は、長期間のうちにp53遺伝子に変異が入ることによって容易に癌化することが判明した。最近ヒトの乳癌においてFbw7の異常が多く報告されており、本研究結果はそのメカニズムを具体的に再現したものである。骨髄特異的Fbw7コンディショナルノックアウトマウスは、骨髄幹細胞中のG0期細胞群が正常の4分の1まで減少し、さらに骨髄移植による骨髄再建能を完全に喪失する。このことから骨髄幹細胞がG0期に維持されることが幹細胞機能にとって必須であり、そのG0期維持にFbw7が重要な役割を果たしていることが遺伝学的に証明された。
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