研究課題
われわれはマウス個体を用いて、GO期制御のメカニズムを研究している。昨年度までに、SCF複合体型ユビキチンリガーゼであるSCF/Skp2とSCF/Fbw7がこの制御に重要であることを報告してきた。特に細胞の増殖はSkp2とFbw7で正負にコントロールされており、これが幹細胞機能に重要であること、さらにSkp2-p27、Fbw7-Mycの両軸に障害が生じると発癌することを明らかにしてきた。本年度は実際にマウスFbw7遺伝子を種々の臓器で誘導的に破壊することによって、そのマウスにどのような異常が生じるのかという点につき、特に発癌を視野に入れて研究を進めた。まず乳腺組織においてFbw7コンディショナルノックアウトマウスを作製した。このマウスはBlgプロモーター下にCreを発現するので、妊娠による乳腺の発達によってFbw7遺伝子の破壊が起こるようにしてある。その結果、乳腺組織は強い低形成を示し、腺上皮の機能不全による授乳障害が観察された。つまりこのノックアウトマウスから生まれた仔マウスは全例栄養失調で死亡することがわかった。さらに免疫染色法によってc-Mycの蓄積やp53の誘導が認められ、それに呼応してアポトーシス細胞の著しい増加が起こることが明らかとなった。しかしp53の欠損が起こったマウス個体では一転して発癌を呈することが明らかとなった。つまりFbw7の欠損はc-Mycの分解障害を起こし、c-Mycの蓄積によるp53の発現上昇が起こってアポトーシスが誘導され、その結果として乳腺組織の縮小が起こるが、何らかの理由により(一定の確率により)p53の機能が喪失すると、c-Mycの蓄積が発癌を引き起こすものであることが示唆された。
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http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/saibou/index.html