1. メチル化DNA結合タンパク質MBD1に関連するMCAF1の機能解析 MBD1-MCAF1-SETDB1複合体が癌抑制遺伝子の不活性化に関わることに加えて、Sp1-MCAF1複合体がテロメラーゼ遺伝子の発現維持に関わることを明らかにした。また、MCAF1は種々の癌組織の70%以上で過剰発現しており、癌細胞に共通したメカニズムのひとつであることを示唆した。MCAF1複合体のプロテオーム解析を行い、癌細胞内の複合体形成を明らかにした。 2. CTCF依存性クロマチンインスレーターの癌関連性の解析 核内のゲノムは数多くのドメインに区画化されており、その境界配列(インスレーター)はインスレーター結合タンパク質CTCFで認識されている。全ゲノムのChip-on-chip解析を用いて、CTCFが染色体凝縮に働くコヘーシン複合体と協働することを示した。癌発症に関わる高脂血症の病因であるアポリポタンパク質遺伝子クラスターを解析し、CTCFとコヘーシン複合体によるクロマチンループ形成と発現制御について明らかにした。 3. 癌細胞で高発現するHMGAタンパク質の機能解析 HMGA2がヒト膵癌細胞と膵癌組織における上皮間葉転換に関わることを明らかにした。さらに、ヒト胃癌において、HMGA1が細胞増殖と腫瘍形成に関わることを明らかにした。胃癌細胞において、HMGA1はWnt/β-catenin/c-myc経路で発現誘導されることが判明した。 4. 癌細胞の核内構造異常に関する解析 癌細胞の核異型を解析するために、細胞核構造の形態学的な計測法の開発を行った。とくに、染色体とヘテロクロマチン、核スペックルなどの形成状態を解析した。また、SV40癌ウイルスのlarge T抗原がTACC2を標的とすることで、分裂異常と染色体異常を誘導することを示した。
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