研究概要 |
DNAメチル化やピストン修飾異常は、がん化において重要な役割を果たしている。これら、エピジェネティックな異常により不活化されている遺伝子の同定し、その機能を解析することにより、がん化の分子機構の解明だけでなく、新しいがんの診断や治療法の開発に重要な知見が得られると考えられる。本研究では、DNAメチル化により不活化される新規遺伝子を同定し、がんの発生と進展における役割について明らかにすることを目的とする。RASの負の制御遺伝子RASSF遺伝子群の解析により、RASSF2が大腸癌において異常メチル化によりサイレンシングされており、Rasの活性化には、K-rasやBRAFの遺伝子変異だけでなく、RASの負の制御遺伝子がエピジェネティックな異常により不活化されていることが重要であることを明らかにした(Gastroenterol, 2005)。また、DNAメチル化阻害剤投与により発現誘導される遺伝子の網羅的解析により、WNTの調節遺伝子、SFRPが大腸癌において異常メチル化により不活化されていることを報告した(Nat Genet, 2004)。胃癌においては、APC遺伝子やβ-catenin遺伝子の変異の頻度は低いにもかかわらず、WNT経路の活性化がしばしばおこっている。胃癌細胞株において、SFRP1、SFRP2、SFRP5、DKK1がメチル化されており、エピジェネティックな異常が、WNTシグナルの活性化に重要である可能性が示唆された。Methylated CpG island Amplification(MCA)法を用いて、腎癌において異常メチル化している遺伝子群をスクリーニングし、HOXB13遺伝子が、メチル化により不活化されていることを明らかにした(Oncogene, 2005)。HOXB13の遺伝子導入により、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導でき、その不活化は腎癌の発生に関与することが示唆された。
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