研究概要 |
がん関連遺伝子産物のSUMO化による制御を明らかにすることを目的とし、Etsファミリー転写因子のSUMO化を明らかにし、SUMO化の機能解析を行った。Etsファミリー転写因子は細胞の増殖、分化など様々な過程において重要な役割を果たしており、その脱制御は細胞のがん化へ関与することが知られる。Ets転写因子のプロトタイプであるEts-1のSUMO化部位をN末端領域と転写活性化ドメイン内の2ヵ所に同定した。SUMO化は転写活性化能を負に制御していると考えられ、SUMO化部位のLysをArgに置換した変異体(KR)は野生型(WT)に比較して転写活性化能が増大した。さらにPIASyはEts-1の特異的SUMO-E3リガーゼとしてSUMO化を促進し、Ets-1のSUMO化非依存的に、しかしSUMO-E3リガーゼ活性依存的にEts-1の転写活性を抑制することから、Ets-1依存的な転写活性制御に重要な役割を持っていることが示唆された。またPEA3サブファミリーメンバーであるE1AFでは4ヵ所のSUMO化部位を同定した。SUMO化部位のLysをArgに置換した変異体(KR)は野生型(WT)に比較して活性亢進が認められたことからSUMO化は転写抑制に機能していることが示唆された。さらにEts-1と同様にPIASyにより特異的にSUMO化が促進され、PIASyの共発現によりWT, KR共に活性が抑制されたことからPIASyはE1AFのSUMO化非依存的に転写活性を抑制すると考えられた。Ets-1,E1AFともにSUMO化の有無により核局在、ユビキチン-プロテアソーム系による分解に顕著な変化は認められなかった。しかし、PIASyはEts-1と結合することによりEts-1のユビキチン-プロテアソーム系による分解を阻害し安定化することが分かった。現在この安定化機構を解析中である。
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