我々は以前にGISTにはその発生原因となるc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異が傍細胞膜領域に集中してみられることを見つけたが、マスト細胞性腫瘍では主としてキナーゼドメインIIにc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異がみられることが知られている。我々は消化管にGISTが多発するgermlineのc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異を持つ家系も見つけ、c-kit遺伝子に機能獲得性突然変異を持たないGISTの約半数に、PDGFRα遺伝子の機能獲得性突然変異がみられることも明らかにした。本研究では、色々なタイプのc-kit・PDGFRα遺伝子の機能獲得性突然変異がどのシグナル系を介して腫瘍化に関与するのか、腫瘍化する細胞型の違いはどのような機序によるのかについて、遺伝子改変マウスや遺伝子変異導入培養細胞を用いて明らかにしたい。本年は、c-kit遺伝子のエクソン17に突然変異を持つ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)がようやく作製でき、カハールの介在細胞の過形成やGISTの発生が確認できたので、今後このマウスを用いて、GIST発生のメカニズムやマスト細胞における遺伝子変異の影響を調べていく。また、現在c-kit・PDGFRαの変異遺伝子導入培養細胞におけるシグナル伝達系の詳細につき検討している。これに付随して、connexin43が小腸に発生するGISTでは発現が強く、胃のGISTでは発現が検出できないことを見つけ、小腸GISTと胃GISTでは起源細胞と考えられるカハールの介在細胞のサブタイプが異なる可能性につき言及した。
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