ファンコニ貧血(FA)は劣性遺伝性疾患で、進行性骨髄不全、骨格異常、高発がん性を示す。細胞レベルでは染色体不安定性と、マイトマイシンCなどのDNAクロスリンク薬剤に対する高感受性が特徴的である。FAには少なくとも12の相補群が存在し、11の原因遺伝子が同定されている。これらの遺伝子産物は共通のDNA修復経路(相同組み換え、損傷乗り越え修復)で働く。このうち8つの遺伝子産物は核内てFA複合体を形成し、ユビキチンE3リカーゼとして、キーファクターであるFANCD2をモノユビキチン化する。FANCD2はモノユビキチン化されるとクロマチンに移行しDNA修復に機能する。しかし、FA遺伝子のDNA修復機能の本質がいったい何なのか、また、その制御機構についてはいまだに明らかではない。本年度の研究の成果を以下にまとめる。 1.ハイブリッド法による結合タンパクのスクリーニングを行ったところ、いくつかの結合候補分子を得たが、いずれも単独でユビキチンに結合できず、モノユビキチン受容体ではないと結論した。この検討の副産物として、FANCD2とFANCEの結合を確認し、その結合様式の解析を行った。また、TAPタグ融合型FANCD2を発現させた細胞からプルダウンし、銀染色後切り出しマススペック解析したところ(京都大学 大川克也博士との共同研究)、新規の因子が同定され、その機能解析をスタートした。 2.FANCJの機能解析。DT40細胞を用いて、FANCJ遺伝子C末の終止コドンにGFPをインフレームにノックインした細胞を作製し、さらにFANCC遺伝子をノックアウトしてFANCJのフォーカス形成やクロマチン移行を解析した。FANCCの遺伝子破壊の有無にかかわらず、FANCJの動態に大きな変化は認められなかった。また、EANCJ欠損細胞において、免疫グロブリン重鎖遺伝子が高頻度に自然に欠落していく現象を見いだした。そのメカニズムの解析を進めている。
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