研究概要 |
ファンコニ貧血(FA)は好発がん性、骨髄不全などを示す遺伝性疾患で、細胞レベルでは、染色体不安定性と、マイトマイシンC(MMC)などのDNAクロスリンカー剤に対する高感受性が特徴的である。これまでに13の原因遺伝子(FancA/B/C/D1/D2/E/F/G/I/J/L/M/N)が同定された。FA経路によるDNA修復には、多数の遺伝子産物から構成されるコア複合体により、FANCI/FANCD2複合体がモノユビキチン化されることが必須である。その後、FANCI/FANCD2複合体はクロマチン移行してフォーカス形成し、DNA修復を行う。 1. FANCD2コンディショナル細胞を作成し、それをもとにしてFANCIとダブルノックアウト細胞の作成を行った。FANCD2, FANCIの単独ノックアウト細胞はそれぞれ増殖が緩徐である。そに比べて、FANCD2/FANCIダブルノックアウト細胞は、軽度ではあるが、さらに増殖が緩徐化しており、両者の機能が互いに完全に依存しているわけではないことが明らかとなった。今後さらにシスプラチンなどの感受性を調べ、両者の関係を検討する。さらに、この細胞に赤色蛍光蛋白質と融合したFANCD2、さらにその変異体などを発現し、検討を進める。 2. 早稲田大学の胡桃坂博士ちと共向で、FANCD2のヒストンシャペロン活性とのDNA損傷修復との関係を調べた。FA患者由来のFANCD2変異体であるS127G、R305W、R1236Hを発現プラスミドとしてFANCD2欠損細胞に導入し、シスプラチン感受性を調べたところ、R305Wのみ、軽度ではあるが、感受性を十分相補できないことがわかった。さらに当該変異体は、胡桃坂研究室での検討で、ヒストンシャペロン活性が低下していた。さらに多数の変異体を作成し、FANCD2のヒストン結合ドメインの同定を行って、ヒストンシャペロン活性を完全に失ったFANCD2変異体を作成し、さらに検討する予定である。
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