研究課題
発がんにおける遺伝子間相互作用と多段階発がんにおける分子経路を明らかにすることを目的とし、レトロウィルス挿入変異を用いた発がん誘導実験を行いレトロウィルスにより活性化する遺伝子の協調作用を解析した。これまでに、急性骨髄性白血病(AML)の発症においてはHoxa9とMeis1の協調作用が重要であることを示しているが、さらに完全な白血病が形成されるまでにどのような発がんシグナルが必要か検討した。Hoxa9とMeis1を単一のレトロウィルスベクターでマウス正常骨髄細胞に導入し放射線照射したマウスに骨髄移植をすると、100%の被移植マウスに平均18週でAMLの発症を認めた。このAMLからレトロウィルス挿入部位を単離し、共通挿入部位からHoxa9/Meis1の協調遺伝子候補としてTrib1、Evi1、Ahi1、Rarα、Pitpnbを同定した。Trib1とEvi1については再度Hoxa9/Meis1とともに骨髄細胞に導入し、in vitro及びin vivoの実験系で白血病発症に対する協調作用を確認した。Trib1は単独の発現でも100%のマウスがAMLを発症し、この場合Trib1レトロウィルスの挿入部位から共通挿入部位としてHoxa7とHoxa9を同定して、Trib1とHoxaの協調作用は遺伝学的にも確認された。Trib1はMAPKのリン酸化を亢進することが知られているが、Trib1陽性AMLでこの事実を確認した。一方、Apc遺伝子のヘテロ変異を有するMinマウス由来大腸上皮細胞株にレトロウィルスを導入して、軟寒天培地でコロニー形成を誘導した。これらの形質転換コロニーからレトロウィルス挿入部位を同定し、このシステムが造血細胞以外の組織にも適応出来る可能性を示した。また、レトロウィルス挿入変異部位のシークエンス特異性について検討し、RNAの二次構造との関連性を示唆した。
すべて 2005
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