研究概要 |
我々が見出した膵臓がんなどに見られるグルコース、アミノ酸、血清など栄養因子の極度の欠乏に対する耐性、及び低酸素下では多くの細胞でグルコースに対する依存性が低下するという一見矛盾する反応の、生化学的機構及びそれを支える遺伝子群及びその働きを明らかにすることを目的とした。低酸素による反応は大腸がん細胞、DLD-1,HCT-14,WiDrなどでも観察されたがLoVo,HCT-116などのTGF-β受容体の変異を持っている細胞では観察されなかった。そこでHCT-116細胞にTGF-β受容体の野生型を発現すると反応が観察された。さらに、TGF-β受容体の阻害剤であるSB431542を培地に入れるとDLD-1でもHepG2細胞でも反応が阻害された。HepG2細胞の培地にTGF-βを50ng/mlで添加すると、大気圧中でもグルコース飢餓に耐性となった。また、多くの細胞で低酸素によりTGF-βが誘導されることも報告されている。低酸素によるグルコース飢餓耐性の誘導がTGF-βが引き金になっている可能性が明らかになった。以上の結果より、TGF-βがSmad系非依存的に関わっていることが分かった。一方、これらの反応に関わるARK5の多発性骨髄腫細胞での転写がc-MAF,MAFBにより制御されていること、またその強い発現がc-MAF、MAFBの発現量と共に治療への抵抗性の強い因子であることがわかった。
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