研究概要 |
我々が見出した膵臓がんなどに見られるグルコース、アミノ酸、血清など栄養因子の極度の欠乏に対する耐性、及び低酸素下では多くの細胞でグルコースに対する依存性が低下するという一見矛盾する反応の、生化学的機構及びそれを支える遺伝子群及びその働きを明らかにすることを目的とした。この反応には、AMPK、AKTのほかに我々が見いだした、ARK5が関与することが明らかになっているが、このARK5の活性を調節する上流のキナーゼとし従来AKTによる600番目のセリンのリン酸化を明らかにしてきたが、これとは別にAMPK及びその関連キナーゼに共通に認められるactive T Loopの活性中心近傍のリン酸化が関与することを明らかにした。そのアミノ酸は211番目のスレオニンであった。このスレオニンをリン酸化する上流のキナーゼは、グルコース欠乏による活性化では、他のAMPKの活性化です出に明らかにされているLKB1が関与していることが明らかになった。これらとは別に、IGF-1による刺激時にはARK5のリン酸化はNDR2と呼ばれるセリンスレオニンキナーゼによることが分かった。さらにNDR2はpI3キナーゼの活性化を通じ,PDK1依存的にリン酸化され、同時にS100タンパク質依存的にCaによる制御を受ける別のキナーゼよるリン酸化と二重の制御を受けていることが分かった。これらの二つのシグナルが、どのようにして、あるいはなぜに二重の支配を受けることの生物学的意味に関しては今後の解析を待つ必要がある。
|