研究概要 |
CpGアイランド(CGI)メチル化形質は、様々な分子機構により誘発されると考えられる。これまで、CGI内の散在性のCpG部位にde novoメチル化(メチル化の種)が誘発される頻度が増加している細胞株が存在すること、また、メチル化の種の増加は遺伝子サイレンシングの原因となるCGI全体の高密度メチル化も誘発することを示してきた。一般的に、遺伝子サイレンシングは転写が少ない遺伝子に起こりやすいとされる。そこで、今年度は、メチル化の種の増加が転写量の多い遺伝子にも起こるか否かを明らかにすることを目的とした。種の増加を示す胃がん細胞株2系統(AGS, KATO-III)と、示さない胃がん細胞株2系統(HSC39, HSC57)を、脱メチル化剤5-aza-2'-deoxycitidine(5-aza-dC)により処理、発現回復する遺伝子をオリゴヌクレオチドマイクロアレイにより解析した。5-Aza-dCの処理濃度として、それぞれの胃がん細胞株において、DNAメチル基転移酵素を高度に低下させ、かつ、細胞増殖抑制が軽微な濃度を設定した。処理前は発現がほとんどなく、処理後に16倍以上上昇した遺伝子数は、AGS, KATO-III, HSC39, HSC57で、それぞれ44,97,21,9個であった。プロモーター領域CGIのメチル化状態を解析したところ、メチル化によりサイレンシングされる遺伝子数は、それぞれ24,41,4,1個と推計された。これら遺伝子のうち13個にっいて、正常な胃での転写量を検討したところ、転写量が多い遺伝子8個は種の増加を示す細胞株でのみメチル化されていたのに対し、転写量が少ない遺伝子5個は何れの細胞株でもメチル化されていた。従って、種の増加は、プロモーター領域CGIにおいて、転写によるメチル化からの防御に打ち勝って、高密度メチル化を誘発することが示唆された。
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