研究概要 |
DNAメチル化異常は様々なヒト腫瘍に関与するにも関わらず,その誘発要因はほとんど明らかになっていない。内在性の要因として,これまで,CpGアイランド内のCpG部位に散在性DNAメチル化が誘発されると,CpGアイランド全体の高密度なメチル化(遺伝子サイレンシングを誘発する)につながることを示してきた。平成19年度は,散在性メチル化が増加した胃がん細胞株2系統と増加していない細胞株2系統を用いて,脱メチル化剤処理後マイクロアレイ解析を行い,前者では後者に比べて多数の遺伝子がサイレンシングされていること,また,高転写レベルの遺伝子でもサイレンシングされることを示した。また,各種DNAメチル化酵素(DNMTs)の発現量を解析し,散在性DNAメチル化が増加した細胞株ではDNMT3Bの過剰発現があることを認めた。DNMT3BをMKN28胃がん細胞株で過剰発現させると,散在性メチル化が増加し,高密度メチル化も出現することも認めた。現在,siRNAによるDNMT3Bの発現抑制により,散在性メチル化が減少するか否かを検討している。一方,外来性のDNAメチル化異常誘発要因として,ヒト胃がんの強力な誘発因子であるHelicobacter pylori(H.pylori)感染は,強力なDNAメチル化異常誘発因子であることを明らかにしてきた。しかしH.pylori憾染がどのような遺伝子にDNAメチル化異常を誘発するのか明らかになっていなかった。そこで,H.pyloriの感染がある人とない人の胃粘膜で48個の遺伝子についてDNAメチル化を解析し,明確な特異性があることを明らかにした。
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