研究課題
AML1遺伝子は、急性白血病において最も高頻度に染色体転座などによる変異を受ける。AML1は成体型造血に必須な転写因子であり、CBFβと二量体を形成して特異的DNAに結合し標的遺伝子の転写を制御する。我々はマウス骨髄前駆細胞よりAML1複合体を精製し、AML1複合体にはCBFβの他にヒストンアセチル化酵素p300/CBPやMOZ、前骨髄性白血病タンパク質PML-1、リン酸化酵素HIPK2が含まれることを見いだした。MOZは、MYST型のヒストンアセチル化酵素で、急性骨髄性白血病でみられる染色体転座により分断され、融合遺伝子を形成する。MOZの造血における役割を解析するため、MOZ欠損マウスを作製したところ、MOZホモ欠損マウスは胎生15.5日までに全ての胎仔が死亡し、胎仔肝臓における成体型造血に顕著な異常が見られることを見出した。胎生14.5日のMOZホモ欠損マウス胎仔肝臓では、造血幹細胞及び造血前駆細胞の広範な減少が見られ、赤血球の最終分化障害、Bリンパ球の減少、骨髄性細胞の増加も見られた。造血幹細胞及び造血前駆細胞の広範な減少はMOZヘテロ欠損マウスでも見られた。造血幹細胞でのMOZの機能を解析するために、MOZホモ欠損マウスの胎児肝細胞(Ly5.2)を野生型競合細胞(Ly5.1)と共に、放射線照射したマウス(Ly5.1/Ly5.2)に移植したところ、MOZホモ欠損マウス由来細胞は、移植後のマウスの末梢血及び胸腺、脾臓、骨髄のどの造血組織にも全く見られなかった。加えてMOZヘテロ欠損マウス由来細胞も、移植マウスにおける割合が野生型マウス由来細胞と比べて減少していた。移植細胞数を増加させるとMOZヘテロ欠損細胞の骨髄再構築能の減少は回復したが、MOZホモ欠損細胞の骨髄再構築能は全く回復しなかった。これらの結果から、MOZは造血幹細胞の形成・維持に必須であることが示された。
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