研究概要 |
ヒト白血病では特異的な染色体転座が見られ,その結果生じる融合遺伝子産物の発現やがん遺伝子の発現異常が発症に関与する。PML遺伝子は,急性骨髄性白血病において高頻度に見られるt(15;17)染色体転座によりRARa遺伝子と融合し,PML-RARa融合遺伝子産物が発現する。この転座が見られる急性骨髄性白血病はEAB分類M3サブタイプに分類され,好中球分化に異常が見られる。我々は,PMLが転写因子PU.1及びC/EBPeと結合してその転写を活性化すること及びC/EBPeによる転写を活性化した。マウス骨髄性前駆細胞にメタロチオネインプロモーターに連結したPU.1又はC/EBPeを導入しZn添加により発現を誘導するといずれも好中球へ分化するが,これらの細胞にレトロウイルスベクターによりPMLを導入すると分化がさらに促進されることが示された。また,白血病で発現するPML-RARaは,PU.1及びC/EBPeによる転写活性化を阻害し,好中球への分化を阻害した。これらの結果からPMLはPU.1及びC/EBPeによる転写を活性化することにより好中球分化を促進し,PML-RARaは正常PMLの機能を阻害して好中球分化を阻害することにより白血病を誘導することが示唆された。また,PMLのSPドメインにリン酸化部位を4カ所同定し,これらのリン酸化部位がPMLによるPU.1及びC/Eを新たに見出した。7種類のPMLのアイソフオームのうちPMLIVのみがPU.1BPeによる転写活性化と好中球分化促進に重要であることが示された。
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