肝多段階発がん過程におけるDNAメチル化の変化をゲノム規模で評価するため、メチル化CpGアイランド増幅(MCA)法にBACアレイを用いた比較ゲノムハイブリダイゼーション法を連結したBAMCA法を導入した。本法には、国立がんセンター研究所と東京医科歯科大学難治疾患研究所稲澤譲治教授が共同で作成したMCG Cancer Array-800を用いた。大腸がん肝転移症例より得られた正常肝組織、B型あるいはC型肝炎ウイルス感染を伴う肝細胞がん症例より得られた慢性肝炎・肝硬変症を呈する非がん肝組織、ならびに肝細胞がん組織よりゲノムDNAを抽出し、はじめにメチル化感受性制限酵素つづいてメチル化非感受性制限酵素で処理し、メチル化DNA断片のみをPCR増幅ならびに蛍光標識した。年齢を概ね適合させた複数の大腸がん肝転移症例より得られた正常肝組織由来ゲノムDNAを混合して対照検体とし、ゲノム規模のDNAメチル化の状態を把握した。現在、機械学習法により、正常肝組織から肝細胞がん症例の非がん肝組織を区別でき、肝細胞がん組織においても保持されるようなDNAメチル化プロファイルの同定を試みている。さらに、長期経過観察後に肝細胞がんを発症したかどうかが確認されている慢性肝炎・肝硬変症患者の、肝細胞がん発症前の肝生検標本の蒐集に努めている。今後の解析により、着目するDNAメチル化プロファイルが、後に肝細胞がんを発症しなかった患者には認められず、肝細胞がんを発症した患者の慢性肝炎・肝硬変症の段階での生検検体にのみ検出されることが、バイサルファイトシークエンス法等で確認された場合、DNAメチル化診断ミニチップを作成するなどして、慢性肝炎・肝硬変症による経過観察患者における発がんリスク診断の実用化を目指したい。
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