多くの細胞質・核質に存在するタンパク質の分解にユビキチン-プロテアソーム系が関与している。この分解系の特徴は、基質特異性が高く、分解速度が速いことである。この特徴を利用して、転写因子や細胞シグナル伝達や癌遺伝子産物や癌抑制遺伝子産物は、自分自身のタンパク質としての発現量を調節している。性ホルモン受容体も最近ユビキチン化により発現量(分解量)が制御させていることが報告されている。特にエストロゲン受容体α(ERα)やアンドロゲン受容体(AR)などのホルモン受容体は、リガンドと複合体を形成して、転写因子として標的遺伝子の転写を活性化し、生殖器の発達やホルモン依存性癌(乳癌や子宮体癌など)の腫瘍形成に影響を与えることが知られている。本研究計画では、ホルモン依存性癌において重要分子であるホルモン受容体(男性ホルモンと女性ホルモン)に対して、そのユビキチン化の分論的機序を解明することを目的とする。我々はERαを特異的にユビキチン化するユビキチンガーゼE3、ERα-associated Ring-_finger protein(EARF)を新たに同定し、生化学的及び細胞生物学的解析を行った。EARFはERαと直接結合し、in vitroユビキチン化アッセイにおいてERαをユビキチン化することが確認された。また細胞内にEARFを過剰発現させると、ERαのユビキチン化を促進することが判明した。また、各進行度の子宮体部癌の病理検体に対して、ウエスタンブロット解析によるEARFの発現レベルを調べたところ、進行度レベル依存性の発現変化が認められた。したがって、今後臨床医学的に乳癌や子宮体癌などのホルモン依存性癌におけるEARFの分子レベルでの解析が重要であることが示唆された。
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