研究課題
癌抑制性の本シグナル経路は、発生、分化、炎症、免疫系とも深く関わることが判明し、幅広く展開する必要性から、ここ数年の成果を列記する。1.IKK(IκB kinase α)依存性のΔNp51Bリン酸化、分解が皮膚分化に必須なこと、ΔNp51BはNotch1を抑制し皮膚幹細胞を維持すること、これら経路の連携で,重層扁平上皮形成、その破綻が種種の皮膚疾患原因となることを見出した。2.分肢症候群原因遺伝子dactylin/Fbxw4が、やはり同症候群原因遺伝子p51やp73のユビキチンリガーゼ(p51UbL)であることを見出した。3.DNA損傷性ストレスに対する細胞応答(増殖停止、セネッセンス、アポトーシス)決定機構は、IKKシグナルソームによるp51/p73、NFκBシグナル経路の統合制御が本態であることを解明した。弱ストレスでは、活性化p51UbLがp51/p73を強力に分解し、p53のみが速やかに(3時間)安定化する。活性化p53は単独で、p21等を転写活性化し、細胞周期停止、DNA修復を惹起する。一方、強、持続性ストレスは、IKKによりp51UbLを不活性化し、p51/p73の遅延した(48時間)安定化をもたらす。活性化p53はp51/p73と協調することで、はじめてアポトーシス誘導性プロモーター(BAX等)の活性化が可能になり、アポトーシスが引き起こされる。アポトーシス抵抗性細胞ではp53のみが安定化し、セネッセンスが起こる。4.IKKシグナルソーム-p51シグナル経路の筋芽細胞分化時での決定的な機能を見出し、幹細胞などが前癌細胞になることを防ぐチェック機構と推測している。5.p53ファミリーに特徴的な三領域を連結したキメラ遺伝子のアデノウイルス組み換え体を作製し、ヒト腫瘍細胞株を用いたex vivo、in vivo遺伝子治療のモデル実験を行った。腫瘍が消滅するなど、p53よりもはるかに強い腫瘍増殖抑制効果を有するものが選択され、遺伝子治療材料としての有用性を見出した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Genes Cells 10
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