研究課題
癌抑制遺伝子p53は、紫外線やγ線、抗癌剤などのDNA損傷やストレスに応答して、損傷が軽度の場合には、G1期停止、DNA修復を誘導し、修復不能の場合にはアポトーシスの誘導で、損傷DNAをもつ前癌細胞を排除したり、セネッセンスの誘導で、前癌細胞の拡大を防ぐと考えられている。しかし、この機構については、不明の点も多い。p53ファミリー蛋白質(p51/p63、p73、p53)の相互作用、これら蛋白質の組み合わせによる標的遺伝子に対する影響を解析し、アポトーシスを誘導しないp21、cyclinG、GADD45、RR2、MDM2の転写活性化には、p53単独で十分であるが、アポトーシス誘導遺伝子BAX、NOXA、AIP1の転写活性化には、p53だけでは不十分でありp53とp51あるいはp73が、協調作用することで、はじめて十分な活性化が得られることを見い出していた。本年度は、これと関連して以下のことを見いだした。アポトーシス感受性細胞にDNA二重鎖切断を引き起こす抗癌剤を低濃度で投与すると、p53のみが3時間後から持続的に活性化される。この条件では、アポトーシス誘導遺伝子の転写を促進できないので、セネッセンスが誘導される。高濃度の抗癌剤を投与すると、DNA上の二重鎖切断部位にIKKγが集積し、p51UBLの不活化によるp51/73の安定化をもたらし、核内にp53と共にp51/73が蓄積する。p53はp51/73と協調すると、はじめてアポトーシス誘導遺伝子の転写を促進できるので、アポトーシスが誘導される。一方、アポトーシス抵抗性の繊維芽細胞等においては、p51/73は転写レベルで抑制されており、セネッセンスが誘導される。この時、セネッセンスが誘導される条件においても、p53のSer46のリン酸化が、アポトーシスを起こしつつある細胞と同様に検出された。従って、従来から定説となっている「p53によるアポトーシスに必須とされるSer46のリン酸化」は、必ずしも必要ではないことが判明した。
すべて 2006 その他
すべて 雑誌論文 (3件)
J Gene Med. 8
ページ: 1120-1130
Genes Cell (in press)
Oncogene (in press)