研究課題
内皮細胞が産生し、自らに作用して血管新生を抑制する新規血管新生抑制因子Vasohibin-1と、アミノ酸構造上56%相同のホモローグであるVasohibin-2の血管新生調節における役割について、遺伝子改変マウスやアデノウイルスベクターによる肝臓での過剰発現の実験を用いて解析した。その結果、Vasohibin-1は主に血管新生が停止する部位の内皮細胞に発現し、血管新生の終息と新生血管の安定化に寄与すること、これに対してVasohibin-2は主に血管新生周辺の間質に浸潤する骨髄由来単核球に発現し、Vasohibin-1の作用と拮抗して血管新生を促進することが明らかとなった。実際、ヒト非小細胞肺癌の切除標本の免疫染色からVasohibin-1とVasohibin-2のヒト非小細胞肺癌組織における発現を検討したところ、Vasohibin-2の発現は確認されず、ヒト癌では主にVasohibin-1の発現が主体であること、またVasohibin-1は主に壁細胞で被覆されている成熟した腫瘍血管の内皮細胞に発現していることが確かめられた。さらに、マウスにLewis肺癌細胞を移植し、アデノウイルスベクターを用いてヒトVasohibin-1を肝臓で高発現させると、腫瘍血管は、壁細胞によって被覆されていない、未熟な拡張した血管から、壁細胞によって被覆された成熟血管へと変換し、血管断面積は有意に減少した。以上より、Vasohibin-1は、腫瘍においても血管新生の終息と血管の成熟化に寄与すると考えられた。Vasohibin-1、Vasohibin-2共にリンパ管内皮細胞での発現は認められなかった。しかし、マウス角膜のマイクポケット法でリンパ管新生に与える影響を観察したところ、Vasohibin-1は、VEGF-C, FGF-2,PDGF-BBなどによって惹起されるリンパ管新生を、それぞれ顕著に抑制することが確認された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件) 産業財産権 (1件)
Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 27
ページ: 37-41
Biochem. Biophys. Res. Commun. 345
ページ: 919-925
Biochem. Biophys. Res. Commun. 342
ページ: 640-646
Endothelium 13
ページ: 147-155