F-boxタンパク質Cdc4は、Skp1、Cul-1、Rbx1とともにSCF複合体を構成し、ユビキチンリガーゼとして機能すると考えられている。われわれが作製したCdc4ノックアウトマウスは、Notch-4の異常蓄積による血管形成異常が起こり、胎生10.5日目で死亡した。このことは、胎生期における生理的かつ冗長性を示さない基質分子はNotch-4であると結論された。 Tリンパ球特異的にCdc4を欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作製し、T細胞分化過程をCD4およびCD8の発現パターンから解析したところ、分化の中間段階であり、CD4/CD8いずれもが発現し、正の選択・負の選択が行われるステージの細胞が野生型に比べ有意に増加していることが判明した。このステージでは通常増殖を停止しるが、Cdc4ノックアウトT細胞では激しい増殖がこのステージでも認められ、過剰増殖がこの細胞群の増加の原因であると考えられた。 また、生後8週以降よりリンパ腫の発症が認められ、Cdc4は当初報告されたとおり、がん抑制遺伝子として機能していることが裏付けられた。 このような過剰増殖しているリンパ球の生化学的解析では、Notchファミリーとc-Mycの過剰な蓄積が観察された。そこでNotchが転写因子として働く際の共同因子であるRBP-JκノックアウトマウスとCdc4ノックアウトマウスを交配した。このマウスはNotchシグナルが欠失し、かつc-Mycが蓄積している環境を作製することとなり、それらの分子のTリンパ球増殖の効果を調べたところ、このようなTリンパ球でも異常増殖が見られた。このことからCdc4ノックアウトTリンパ球はc-Mycの過剰蓄積により異常な増殖をきたし癌化が誘導されていると結論した。
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