研究概要 |
1)HTLV-1 TaxによるIKK活性化を解析した。JurkatT細胞にTaxを発現誘導してもNFκBは活性化されるもののTAK1は活性化されなかった。HeLa細胞でTAK1をノックダウンしてもTaxによるNFκB活性化は影響されなかった。即ち、TaxはTAK1を直接活性化しないことが明らかとなった。また、HeLa細胞では、Tax発現依存的なNEMOのK63型ポリユビキチン化が観察された。ところが、K63型ポリユビキチン鎖を特異的に脱ユビキチン化する酵素CYLDを過剰発現させてもTaxによるNFκB活性化は影響を受けなかった。K63型E2酵素であるUbc13をノックダウンしたが、NFκB活性化は正常であった。したがって、TaxはNEMOに対してK63型ポリユビキチン化を誘導するが、サイトカイン等の正常シグナルとは異なりユビキチン化はNFκB活性化に関与しないことが強く示唆された。2)がん細胞におけるNFκB標的遺伝子を同定するために、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231およびBT549を用いてNFκBの核移行を阻害するタンパク質SRIκBαを発現する細胞を作製し、SRIκBαを発現する細胞株と空ベクターを発現する細胞株の遺伝子発現プロファイルを解析し、SRIκBα発現細胞で発現が抑制される遺伝子を抽出した。次に、SRIκBαを発現する細胞株で発現が抑制されるものの中で、35種類の乳癌細胞株全体を通してNFκBの活性化度と相関が認められる遺伝子を25個同定できた。3)恒常的NFκB活性化の特に強い12種のがん細胞株を用いて、その増殖のNFκB体存性をIKKの3つのサブユニットであるIKKα,IKKβ,NEMOのノックダウン実験を行い解析した。12株のうち増殖依存性を有していたのが6株であった。すべての細胞がIKKαに依存して増殖していることが明らかとなった。
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