研究課題
ヒトなど哺乳類における腫瘍血管の形成とその維持には、VEGFとその受容体が最も中心的な制御系で、それに様々な促進・抑制因子が関与すると考えられる。本研究の主な目的はVEGF-VEGFRの作用機構を詳しく解析し、病的血管新生・透過性亢進・内皮細胞生存におけるVEGFRのシグナルを分子レベル、個体レベルで明らかにすること、また、VEGFとは独立した制御系を検索することである。本年度は、VEGFR-1, R-2に関してシグナル全体を詳しく調べ、VEGF受容体が内皮細胞特異的に発信する生存・遊走・形態形成のシグナルを明らかにするための系を確立した。研究成果---(1)まず、VEGFR2に関して、siRNAシステムを開発した。これにより、HUVECや、マウス血管内皮細胞から内因性VEGFR2を抑制し、人為的に変異を導入したマウスVEGFR2 cDNAをアデノベクターなどで導入してその性質を検討できる系を樹立した。これにより、内皮細胞の遊走にはVEGFR2-1175Tyrからのシグナルが重要な役割を果たすことを見い出した。(2)K14-VEGF-Eトランスジェニックマウスの解析から、表皮組織の直下には新生血管がほとんどなく、表皮細胞が血管新生阻害物質を分泌する可能性が考えられた。これをもとに表皮細胞の培養上清を検討した結果、抑制物質の有力な候補分子としてトロンボスポンジン-1(TSP1)を同定した。また、これ以外に分子量3〜5万程度の分画にも、2次元の血管新生を抑制する活性を認めた。その血管新生抑制作用を解析中である。(3)ヒト血管腫からT-抗原をもちいて、ヒト内皮様細胞株の樹立に成功した。さらに、この細胞にVEGFR1 cDNAを強発現させ、VEGFR1発現ヒト細胞株を樹立した。VEGF-A依存性に細胞機能変化が認められ、VEGFR1のシグナル解析に有用な系が得られた。
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