研究課題/領域番号 |
17014034
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多久和 陽 金沢大学, 医学系, 教授 (60171592)
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研究分担者 |
岡本 安雄 金沢大学, 医学系, 准教授 (80293877)
吉岡 和晃 金沢大学, 医学系, 助教 (80333368)
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キーワード | がん / 血管新生 / スフィンゴシン-1-リン酸 / S1P_2 / 血管成熟 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
脂質メディエータースフィンゴシンー1-リン酸(S1P)は、血管内皮細胞のS1P1、S1P3両受容体を介して細胞遊走を促進し、インビボにおいて発生期の血管新生およびがんの血管新生を促進することが示されている。しかし、S1P2受容体のがんの血管新生における役割は不明である。S1P_2KO/LacZノックインマウス皮下にLLCマウス肺がん細胞を接種すると、腫瘍辺縁部の血管新生集簇部位の微小血管壁と腫瘍内毛細血管、および、血管外の間質に浸潤する細胞にS1P_2の発現が見られた。腫瘍間質に浸潤する細胞はS1P_2KOマウスにおいて同腹野生型の約2倍の増加が見られた。S1P_2KOマウスでは、同腹野生型に比べてLLC腫瘍血管新生と腫瘍増大が促進され、周皮細胞・平滑筋細胞を伴った腫瘍血管の成熟も促進されていた。B16BL6メラノーマでも同様の結果であった。皮下マトリゲル・プラグ内の血管新生と血管成熟もS1P_2KOマウスで促進された。S1P_2KOおよび同腹野生型マウスから採取した肺胞毛細血管内皮(MLEC)を用いた検討では、S1P_2が内皮細胞のRac活性、細胞増殖・細胞遊走とマトリゲル上での管腔形成を抑制した。また、野生型MLECではS1P刺激によりS1P_2依存性にAktが抑制されたがERKは抑制されなかった。LLCをMLECとともに野生型マウス皮下に接種すると、S1P_2KO由来の血管内皮は野生型由来内皮に比べてLLC腫瘍の血管新生と腫瘍増大を促進した。さらに骨髄移植による検討から、腫瘍浸潤細胞の少なくとも一部は、がん血管新生への関与が注目されているCD11b^+骨髄由来細胞であり、S1P_2を発現していた。以上から、血管内皮と骨髄由来浸潤細胞の双方に発現するS1P_2が協調してがん血管新生を抑制性に制御していると考えられる。S1P_2特異的アゴニストは、これら宿主細胞とがん細胞双方に発現するS1P_2を介して、腫瘍血管新生、腫瘍の増大、浸潤を制御する新たな治療薬として期待される。
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