研究概要 |
Dok蛋白ファミリーのDok-4,5,6が受容体型チロシンキナーゼの中でRETに比較的特異的に結合することが知られている。RETチロシンキナーゼによる細胞増殖、神経分化におけるDok-4の役割について解析した結果、Dok-4の過剰発現は神経芽細胞腫細胞TGWの細胞増殖には影響をおよぼさないものの、著しい神経突起の伸長を誘導することを明らかにした。この現象はDok-4がRap-1の活性化を介して、Erkの持続的な活性化をひき起こすことによるものであった。Dok-4のこの活性にはDok-4に存在するコドン187,220および270のチロシンが重要な役割を果たしていることを証明した。以上の結果から、Dok-4は細胞増殖よりも分化シグナルを活性化することが示唆された。 受容体型チロシンキナーゼの下流でAktが活性化されると、細胞の増殖能、運動能が亢進し、がん細胞の悪性度が増すことが知られている。yeast two hybrid法を用いてAkt結合蛋白質の同定を行った結果、AktのC末端領域と結合するクローンを同定し、全長cDNAのクローニングに成功した。全長cDNAは1870アミノ酸よりなる蛋白をコードしており、その配列中には既知の機能ドメインはなく、全く新規の分子であった。C末端領域にAktによってリン酸化されるコンセンサス配列が存在し、in vitro kinase assayでAktによってリン酸化されることから、Aktの新規基質である可能性が示唆された。作製した抗体で細胞内局在を検討したところ、アクチン細胞骨格系と共局在すると同時に、特に移動する細胞の先端部で活性化Aktと共局在し、細胞の移動、接着あるいは浸潤を制御している可能性が示唆された。生化学的解析より、アクチン線維を架橋する性質を有しており、遺伝子の名前をGirdin(Girders of actin filaments)と名づけた。Girdinの配列特異的なsiRNA(small interfering RNA)を合成し、細胞に導入した結果、細胞運動能を著しく低下させることが、Boyden chamberを用いたmigration assayにて明らかになった。
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