研究概要 |
ギャップ結合はコネキシンの6量体からなる細胞間接着構造であり、低分子量の物質を直接細胞間で交換している。Src癌化細胞ではギャップ結合が阻害されている。我々は以前、Rasのシグナルがギャップ結合の阻害に関与していることを報告している。詳しく解析した結果、AKTの活性化もギャップ結合の制御に関与していることを見出した。Src癌化細胞にドミナントネガティブAKTを導入すると、ギャップ結合の回復が観察された。また、AKTの活性を薬剤を用いて抑制することによっても、同様にギャップ結合の回復が見られた。TNF-alphaの刺激により、ギャップ結合が抑制されることが報告されているが、この抑制にはAKTの活性が関与していることを見出した。AKTの活性をドミナントネガティブ、また薬剤を用いて抑制することで、TNF-alphaによるギャップ結合の阻害が抑えられた。 一酸化窒素(NO)は様々な蛋白をニトロソ化し、酵素活性を制御する。NO産生試薬であるSNAPを細胞に加えると、細胞運動が亢進する。この時のFocal Adhesion Kinase(FAK)の局在と活性を調べると、FAKは細胞運度方向の先端に局在し、リン酸化が亢進している。FAKはSNAPによる細胞運動の亢進に必須であり、また癌細胞のSNAPによる浸潤にも関与していた。FAKのSNAPによる活性には、Srcが関与しており、Srcは498番目のシステインのニトロソ化により活性化され、FAKを活性化していた。また、乳癌由来のMCF7細胞では、エストロゲンに刺激により細胞の浸潤が亢進するが、これにはeNOSの発現亢進によるNOの産生、そしてNOによるSrc, FAKの活性化が関与していた。
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