Ras/MAPキナーゼ経路は活性化のon/offだけでなく、活性化される場所(細胞内局在)、活性化時間(一過的または持続的)もさまざまな因子によって制御されている。これらの制御が破綻すると、細胞は適切な応答能(増殖あるいは分化)を失いガン化する。われわれはネガティブフィードバック因子SproutyがERK MAPキナーゼの活性化時間を制御していることを明らかにしてきた。本研究ではさらにERKの活性化を制御する因子Rassf6(Ras association domain family 6)を同定し、その解析を進めた。Rassf6のファミリー分子Rassf1やRassf2がガン抑制遺伝子と考えられていることから、Rassf6もガン化メカニズムに関与する可能性が考えられた。培養細胞を用いた解析から、Rassf6はRas結合ドメインをもち、実際に活性型(GTP結合型)のH-Rasと結合することがわかった。Rassf6はFGF刺激によるERKの活性化を正に制御することが示され、Rasとの結合をとおしてこの経路の制御に重要な役割をはたすことが示唆された。またRassf6と相互作用する因子を酵母Two-hybrid法スクリーニングにより探索した結果、STE-20様キナーゼMST1が同定された。MST1はCaspaseによって活性化されアポトーシスに関与することが知られている。またこれまでの研究からRassf1がMST1と結合しアポトーシスを促進していることも報告されている。現在我々はRassf6がMST1とRasをリンクさせることで細胞ガン化、アポトーシスに重要な働きをしていないか検討しているところである。
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