細胞死・細胞増殖に関わる新規遺伝子・蛋白質として同定したAAA familyのATPaseであるVCP蛋白質について解析を行い、以下の諸点を明らかにした。 (1)VCP蛋白質内の761番目のスレオニンがリン酸化を受けたアミノ酸を特異的に認識する抗体を複数個作成し、培養細胞を免疫染色をおこなった。その結果、間期の細胞ではセントロゾームが、分裂期の細胞では、紡錘体極やミッドボディが染色された。 (2)VCP蛋白質をノックダウンしたHeLa細胞の増殖能の低下は、wt VCPでは回復するが、この761番目のスレオニンをアラニンに置換したVCPでは回復しないことが判明し、この761番目のスレオニンのリン酸化が細胞増殖に必須であることが示唆された。 (3)外来性のVCPを誘導発現させることができる出芽酵母を作り、その酵母をEMSで処理してDNA変異を導入後、VCPの存在の有無で発育に差のでる温度感受性株を得た。その温度感受性株をゲノムライブラリーでトランスフォームし、温度感受性をレスキューする8つのゲノム断片を得た。得られた遺伝子断片は、多コピープラスミッドにのっていたので、単コピープラムミッドに移し換え、単コピーでも温度感受性をレスキューする遺伝子断片を得た。 (4)上記の遺伝子断片に対応する温度感受性株の遺伝子をPCRで単利し、温度感受性株に戻しても温度感受性が回復しなかった。さらに、そのPCR断片をシークエンスしたところ、点突然変異を同定することが出来た。 (5)VCPをアセチル化する酵素の精製を進め、アセチル化活性のある分画に特異的と思われる蛋白質のバンドを同定した。さらに、その蛋白質バンドに対して質量解を行い、蛋白質を同定した。現在、その蛋白質に対する全長cDNAを取得することを試みている。
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