研究概要 |
細胞死・細胞増殖に関わる新規遺伝子・蛋白質として同定したVCP蛋白質及びそのco-factorについて解析を行い、以下の諸点を明らかにした。(1)VCPのco-factorとして報告されているUfd1,Npl4,p47を特異的に認識する抗体を作成し、種々の癌組織について発現の解析をおこなった。これまで、VCPはほとんどの腺癌・扁平上皮癌で発現の亢進が認められたが、同様な亢進をp47についても確認した。一方、Ufd1,Npll4に関しては、癌腫によって発現量に変化がみられた。これまでの報告で、Ufd1,Npl4は強調的に作用することが報告されていたが、癌腫においては必ずしも同じような発現パターンではなかった。(2)RNAi法を用いて、HeLa細胞で内在性のUfd1,Npl4,p47をノックダウンし、その表現型の解析を行った。VCPのノックダウンでは、細胞周期の停止や多核細胞の増加が観察され、さらに細胞死も観察されるが、これらのco-factorのノックダウンではVCPのノックダウンのような強い表現型は観察されず、細胞周期の進行にはVCP単独もしくは別のco-factorが関与していることが示唆された。(3)VCPのアセチル化酵素候補として同定した蛋白質を過剰発現させると細胞全体として蛋白質のアセチル化がおおよそ1.4倍亢進し、ノックダウンさせるとおおよそ半分ちかくに減少することが明らかになった。過剰発現させた細胞では特に際だった増殖速度の亢進等は観察されなかったが、ノックダウンさせた細胞では、細胞増殖の停止および細胞死が観察された。(4)我々が分離したVCP依存性に増殖能を回復する酵母の温度感受性株は、制限温度下でVCPの発現を誘導することなく培養するとDNA合成の停止がおこらず、DNA合成がだらだらと継続していることが明らかになった。
|