細胞死に関与するVCP蛋白質の機能解析を行い以下の点を明らかにした。 1. VCP蛋白質の定常状態でのアミノ酸修飾を網羅的に解析し、新たに10個所のセリン、14個所のスレオニン、6個所のチロシンがリン酸化を受け、22個所のリジンがアセチル化の翻訳後修飾を受けることを明らかにした。この内、16個のアミノ酸修飾がこれまで機能が知られていないD2α領域(646~765のアミノ酸に対応)とよばれる種間で良く保存された領域に集中していた。さらに、この領域のアミノ酸の修飾によりVCPのATPase活性が変化することが判明し、我々は、これまで機能が全く解っていなかったこのD2α領域をVAR (VCP ATPase Regulatory) domainと呼ぶことを提唱した。 2. 出芽酵母のVCPホモローグであるCdc48の温度感受性株(Cdc48-3)をレスキューするmulti-copy suppressorの同定を行い、Rful (Regulator of free ubiquitin chain 1)と名付けた遺伝子を同定した。種々の解析から、Rfu1はDoa4と呼ばれる脱ユビキチン化酵素の活性を阻害するnegative regulatorであると結論した。heat shock時には、Rfulの減少とDoa4の増加が起こることによって、Ub chainからfree Ubが供給されることが明らかになり、Ub chainが平常時ではfree Ubのリザーバーとしての役割を担うこと、そして、そのリザーバーからのfree Ubの放出時に脱ユビキチン化酵素とそのnegative regulatorのバランスをシフトすることで調節が行われていることを明らかにした。この調節機構はfree Ubの量を維持するためのフィードバック機構と考えられた。
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