研究課題/領域番号 |
17014046
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
開 祐司 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40144498)
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研究分担者 |
宿南 知佐 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (60303905)
近藤 俊哉 京都大学, 再生医科学研究所, 助手 (80362523)
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キーワード | chondromodulin-I / VEGF / 血管侵入抵抗性 / 生体分子 / 結合組織 |
研究概要 |
間葉組織の中では例外的に、軟骨は強い血管侵入抵抗性を示す。ところが、軟骨後期分化(肥大化・石灰化)の進展に伴って、血管侵入許容性へと明確に組織形質をスイッチする。そこで、ATDC5細胞株を用いて、成熟軟骨期と肥大化・石灰化軟骨期からLong SAGE libraryを構築し、各々7万tagの遺伝子発現情報を得た。その比較から、成熟軟骨細胞には多様なangiogenic分子の発現が示され、特異なanti-angiogenic分子の機能が組織形質に重要であると考えられた。このことはニワトリ胚肢芽における骨格形成モデルにおいても示され、VEGFによる血管新生刺激の増強のみでは軟骨性骨原基を囲む血管侵入障壁の破綻を誘導することができないことが判明した。また、血管新生抑制因子Chondromodulin-I(ChM-I)は骨原基芯部の軟骨ECMに局在して無血管性維持に寄与しているものの、骨原基の最外層にはChM-I局在領域を取り囲む未知の血管侵入抵抗性障壁が存在することも明らかとなった。これらの結果は、これまで無血管組織から抽出された血管新生抑制因子について作成されたいずれのKOマウスも血管パターンに異常を示さなかったことをよく説明する。一方、心臓弁は周囲の心筋組織とは対照的に無血管に維持されている。最近、ヒトでも心臓弁にもChM-Iが局在することを突き止め、これが心臓弁に血管侵入抵抗性を与える主な機能分子であることを明らかにした。さらに、その発現消失が弁組織に病的な血管侵入をもたらし、心臓弁膜症の成因の一つとなっていることをKOマウスの解析により明らかにした。即ち、血管新生病態の背後にChM-I vs. VEGFのバランススイッチが関与し、抑制因子の発現消失が病態形成を導くことを、KOマウスを用いて個体レベルで初めて明らかにした。
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