我々は、がん細胞がリンパ管新生因子VEGF-Cを分泌することで腫瘍リンパ管新生を誘導し、結果リンパ節転移を促進する過程を解析し、治療に結び付けたいと考えている。一方で、「がんの転移が成立するためには『がん幹細胞』が転移する必要性がある」という仮説がある。がん幹細胞を分離し、がん幹細胞とリンパ管新生の関連を解析し、がん幹細胞とリンパ管新生いずれも標的とする、がん転移に対する新規の治療法の確立を目的とする。本年度は、以下の研究を行った。 1.がん幹細胞の分離と解析 大腸がんにおいて、CD133陽性細胞ががん幹細胞と考えられている。しかしながら、CD133陽性細胞を分離しただけでは、まだがん幹細胞としての能力をもたないことがわかった。 2.がん間質細胞によるリンパ管新生 がん問質にはpodoplanin陽性の特殊な間質細胞が存在する。この間質細胞によるリンパ管新生作用とリンパ節転移の関与を、ヒト標本で解析した。podoplanin+問質細胞はVEGF-Cを発現し、リンパ管新生を誘導し、リンパ節転移と相関することがわかった。 3.リンパ管新生の基礎研究 1)その他疾患(心臓病)におけるリンパ管新生と抗リンパ管新生療法の効果をマウス実験で評価した。 2)リンパ管関連因子prox1のがん抑制遺伝子としての機能をcKOマウスを作成した。
|