1. がん幹細胞の分離・培養とリンパ管新生の評価 1) 大腸がんのがん幹細胞の分離・培養 細胞株HCT116のうちCD133+細胞とCD133-細胞を分離・培養し、CD133+細胞ががん幹細胞の能力を有することを証明した。肝臓の間質細胞によって、CD133-細胞からCD133+癌幹細胞が誘導できることを示した。一方で、その他の間質細胞では、同様の結果が得られないことがわかった。 2) リンパ管新生の評価 CD133+細胞とCD133-細胞をマイクロアレイで比較し、CD133+細胞に有意にVEGF-Cなどのリンパ管新生因子の発現が高くないことがわかった。つまり、がん幹細胞は、VEGF-Cを産生するがん細胞を生み出す多様性を保証するが、リンパ管新生を誘導する細胞ではないことがわかった。 II. その他のがん腫で同様のことが見られるか? 乳癌および膀胱がん、前立腺がん株で同様の実験をいったが、肝臓の間質細胞は、同様の結果を誘導しなかった。以上の結果は、大腸がんが肝臓に転移するという"seed and soil"の概念を説明するものかもしれない。今後、肺および脳、骨髄の間質細胞の効果を調べる予定である。 III. その他の疾患におけるリンパ管新生の役割 1) マウスにおける心臓疾患モデル(心筋梗塞、心筋炎、高血圧負荷)において、リンパ管新生を調べた結果、急性期にリンパ管新生が誘導されていることがわかった。それら、疾患モデルにおいて、adeno-VEGFR3-Fcによる「抗リンパ管新生」あるいはadeno-VEGF-Cによる「リンパ管新生」の処理をした。結果、それぞれにおいて、心不全が改善されることがわかった。 2) ヒトのサンプルにおいても、心筋層にリンパ管新生が誘導されていることを示した。
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