我々は、TGF-βが誘導する胃上皮由来細胞株のアポトーシスに、Smad→Bim→caspase-9経路が必須であることを示してきた。今年度は、caspase-9 KO新生児マウスとBim KO新生児マウスの胃上皮を組織科学的に解析し、これらの胃上皮ではTUNEL染色陽性のアポトーシス細胞の数が強く減少し、胃上皮の過形成が認められることを示した。TGF-βが生体内の胃上皮細胞においてSmad→Bim→caspase-9の経路でアポトーシスを誘導することを明らかにした。 次に、TGF-βによる細胞増殖抑制作用のみが認められアポトーシス誘導シグナルが発動されない細胞では、アポトーシス誘導シグナルと同時にアポトーシスを阻害するシグナルが導入されている可能性を検証した。TGF-βによる細胞増殖抑制作用のみが認められるマウスB細胞株A20において、TGF-βが活性化を誘導するMEK(ERK)、PI3キナーゼ(Akt)、p38マップキナーゼやJNKの阻害剤を加えることにより、TGF-βがアポトーシスを誘導するようになるかを解析した。その結果、JNK阻害剤存在下においてのみ、TGF-βがアポトーシスを誘導できることを示し、TGF-βはJNKの活性化を介して自らが導入するアポトーシス誘導シグナルを阻害することを明らかとした。また、マウス脾臓由来Bリンパ球においても、JNK阻害条件下においてTGF-βがアポトーシスを誘導できることを示し、Bim KOマウス由来脾臓B細胞ではJNKを阻害してもTGF-βはアポトーシスを誘導できないことを示した。この系でもTGF-βがBimを介してアポトーシスを誘導することを明らかとした。
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