研究課題
細胞増殖因子HB-EGFは、癌細胞の増殖過程でEGFファミリーの中でもとりわけ重要な因子であることが明らかになってきたが、未だその作用機構については不明の点が多い。膜型から分泌型への転換調節がどのような分子機構で行われているのか、その責任プロテアーゼは何か、分泌型HB-EGFがなぜ腫瘍形成を促進するのか等、多くの疑問が残されている。また、HB-EGFは、細胞外マトリックスなどの存在状態に影響を受けて、増殖促進だけでなく、増殖抑制に関わることもわかってきており、その分子機構とその意義についても興味が持たれる。本研究では、HB-EGFの膜型から分泌型への転換の分子機構とその破綻による細胞の異常増殖機構を詳しく解析すると同時に、この異常が原因で過剰な増殖能を獲得しているがん細胞を明らかにし、HB-EGFがどのようにしてがん細胞の増殖に関わるのかを明らかにし、その成果をもとに新しいがん治療法の開発を目指す。平成17年度は、HB-EGFによる腫瘍形成促進機構について特に詳しく解析し、卵巣がん細胞の腫瘍形成にはHB-EGFが必須であり、HB-EGFの発現レベルが高いものほど腫瘍形成速度は早いことを明らかにした。一方、通常の単層培養系において卵巣癌細胞の細胞増殖速度はHB-EGFの発現レベルの違いでほとんど変化しない。なぜHB-EGFの発現が腫瘍形成を促進するのか、単層培養での細胞増殖速度に影響を与えないのか、この点を詳しく調査した。その結果、HB-EGFはコラーゲンゲルや軟寒天など三次元環境で細胞が増殖するときに特に強く要求されることが判った。また、EGFRリガンドによる癌細胞の増殖促進機構を理解するためには、これまでの単層培養での実験に加えて、三次元環境下での細胞の振る舞いについて、さらに詳しく調べる必要があることがわかった。
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