研究概要 |
本研究では、EGFファミリーの膜結合型細胞増殖因子であるHB-EGFの膜型から分泌型への転換の分子機構とその破綻による細胞の異常増殖機構を詳しく解析すると同時に、この異常が原因で過剰な増殖能を獲得しているがん細胞の増殖機構を明らかにし、その成果をもとに新しいがん治療法の開発を目的としている。増殖因子HB-EGFの作用機構と癌細胞の増殖における役割について明らかにするために、1)膜型から分泌型への転換に関わる分子機構、2)HB-EGFによる腫瘍形成促進機構の解析、3)HB-EGFと関連して3次元環境下での細胞増殖に関わる分子の同定、4)HB-EGF阻害剤CRM197に関するトランスレーショナルリサーチ、を行った。1)に関しては、shRNAライブラリーを用いた新規遺伝子探索システムの構築を行い、シェディングに関わる遺伝子の網羅的スクリーニングを開始した。2)に関してはHB-EGFが3次元環境での細胞増殖にとりわけ必要であることを明らかにし、2次元増殖と3次元増殖における細胞内シグナル分子の活性化状態の違いを明らかにした。また,腫瘍形成におけるHB-EGF/EGFRの役割を知る上で、あるいは新規抗癌剤スクリーニングにおいて、3次元培養での評価システムの重要性を示唆した。さらに、2)の成果をもとに3)項の実験を開始し、新たながん標的分子の同定を目指して、3次元増殖特異的に必要な因子の同定を開始した。4)については、CRM197を用いた治験実施の準備がおおむね整った。
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