本研究は、HB-EGFの膜型から分泌型への転換の分子機構とその破綻による細胞の異常増殖機構を詳しく解析すると同時に、この異常が原因で過剰な増殖能を獲得しているがん細胞の増殖機構を明らかにし、その成果をもとに新しいがん治療法の開発を目的としている。これまでに、増殖因子HB-EGFの作用機構と癌細胞の増殖における役割について明らかにするために、1) 膜型から分泌型への転換に関わる分子機構、2) HB-EGFによる腫瘍形成促進機構の解析、3) HB-EGFと関連して3次元環境下での細胞増殖に関わる分子の同定、をすすめてきた。木年は、1)に関しては、shRNAライブラリーを用いた新規遺伝子探索システムの構築を行い、シェディングに関わる遺伝子の綱羅的スクリーニングを開始した。2)3)に関してはHB-EGFが3次元環境での細胞増殖にとりわけ必要であることを明らかにし、2次元増殖と3次元増殖における細胞内シグナル分子の活性化状態の違いを明らかにした。これに続いて新たに導入したshRNAライブラリーによるスクリーニングを実施し、HB-EGFと協調して3次元環境下での細胞増殖に関わる分子の候補として、6種類の候補遺伝子を同定した。現在これらの遺伝子が、HB-EGFによる3次元環境下での細胞増殖にどのように関わるのか、詳しく検討を行っている。今後は明らかになった分子が癌治療の新たな分子標的となるかどうかについても検討する予定である
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