研究概要 |
DNA損傷応答において、ArM, Chk1, Chk2キナーゼがリン酸化・活性化されチェックポイント機構が作動し、その後p53依存的に発現誘導されるWip1ホスファターゼがこれらのキナーゼを脱リン酸化・不活化しチェックポイント機構を解除する。昨年度までの研究により、Wip1はChk2を脱リン酸化・不活化するが、一方Chk2はWip1をリン酸化し、その機能を制御することが示唆されていた。本年度は、まず(1)Chk2によりWip1の46番目のセリン残基がリン酸化され、このリン酸化されたWip1に14-3-3_γ,εが会合することが、Wip1によるアポトーシス抑制作用に重要であることが明らかになった。また、(2)14-3-3_γの発現をsiRNAにより抑制すると、wip1のアポートシス抑制作用が消失することが明らかになった。今後14-3-3_γによるWip1の機能制御の分子機構の解析をさらに進める計画である。また、本年度の研究により、(3)細胞極性・移動を制御するWnt5a/Ror2シグナルが骨肉腫細胞において恒常的に活性化されていることが、matrix metalloproteinase(MMP)-13の発現誘導を介し、がん細胞の浸潤能の亢進に寄与すること、また(がんとの関連が知られている)転写因子AP-1がWnt5a/Ror2シグナルによるMMP-13の発現誘導に重要な役割を担うことが明らかになった。今後、骨肉腫細胞に加えて、腎細胞癌、悪性黒色種などにおけるWnt5a/Ror2シグナルの役割、特にMMPファミリー遺伝子の発現誘導との関連について解析を進める計画である。
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